たかはし耳鼻科クリニックHP

        口腔癌

= 口腔癌 =

口腔癌は、読んで字のごとし、口の中にできる癌の総称です。

舌癌の他に、口の中の発生部位によって、歯肉癌(歯ぐきにできる)、頬粘膜癌(頬の裏側の口腔粘膜にできる)、口腔底癌(歯ぐきと舌の間にできる)、硬口蓋癌(上あごの粘膜にできる)、がある。

診断は、よく見える部位なので容易である。

治療は手術が主体となる。舌の歯ぐきの癌の場合は下あごの骨の一部をとらなければならない。以前はとりっぱなしであったが、今は肩や腰の骨を移植することが可能になった。

口腔癌が発症する原因は明らかではならないが、アルコールの多飲やタバコが考えられている。以前、インドの耳鼻科医と話す機会があったが、インドやパキスタンでは噛みタバコを噛む習慣があり、歯肉癌や口腔底癌が日本では考えられないくらい多いそうです。

 

 
思い出に残る患者さんのはなし

=  aさん 口腔・頬粘膜癌(60代 女性)=

aさんは顔が細いのを長らく気にしてきた。そこで、若い頃から、口の中に綿をふくませて顔をふっくらとさせてきた。

ある日、ふくみ綿をとって自分の口の中を見ると、両方の頬粘膜に何かできていることに気がついた。

早期の癌であった。簡単な手術ですんだ。その後20年近くなるが、頸のリンパ節などへの転移もなく経過は良い。

Aさんの場合、珍しい頬粘膜癌が両側に同時にでき、ふくみ綿が発癌の原因となったことは大いに考えられる。Aさんのように、長期間の慢性的な刺激も発癌の誘因と考えられている。ふくみ綿誘発癌と言える。

 

 

=bさん 口腔多発癌 (60代 男性)=

bさんは、はじめは頬粘膜から歯ぐきにかけての大きな癌で、数年前、下あごの骨を半分とるなど大きな手術を受けている。前主治医の退職にともない私が診ることになった。

以来、数十度におよぶ手術を行った。ほとんどは外来で行う小さな手術である。

ある時は、他の病院にお願いして、レーザー治療をしてもらった。

雨後のたけのこのように、ポコポコと癌ができる。「癌がこんなにも簡単にできるものか?」と思うほど、実によくできる。そのつど、外来でとる。何故か,舌にはできなかったが「まだ、口腔粘膜がのこっていたか。」と思わせるほど、とるところがなくなった。

その後、どうなったのか、私はわからない。

 

 

=cさん  口腔多発癌 (70代 女性 )=

cさんはいつもしかめっつらをしていた。彼女の主治医になったのは癌研に勤め始めて間もない頃だった。確か、発症は舌癌だったと記憶している。次に、硬口蓋粘膜に癌がでてきて私が主治医になった。

cさんもポコポコよくできた。

「またできたの?しかたないね。」

私が癌研をやめる時、cさんに退職の挨拶をしたら、いつもはしかめっつらのc

さんが思いっきり泣いてくれた。退職の挨拶をして、患者さんにあんなに泣いてもらったのは、後にも先にも、彼女が一番だ。

やめて数年後、彼女の息子さんが遠いところをわざわざ私の病院を訪ねてきてくれた。

Cさんが亡くなった原因は他の病気だったそうだ。