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子供は大人に比べてなぜ中耳炎になりやすいのか?

                                                2005年1月 北海道新聞夕刊に掲載

この稿を読まれるお母さんの中には、お子さんが中耳炎で、耳鼻科通いをなさっている方がおられるかもしれません。
なぜ、子供は中耳炎が多いのでしょう。

このことを理解していただくには小学生時代に習った耳のしくみについて思い出していただかなければなりません。

音は空気のふるえです。耳の穴(外耳道)に入った音は鼓膜にぶつかり、鼓膜がふるえます。鼓膜には小さな骨がついていて(この骨を耳小骨といいます)、鼓膜がふるえると耳小骨がふるえて、このふるえがきこえの神経に伝わります。

外耳道の奥に鼓膜があり、鼓膜を壁の一面とし耳小骨のある小さな空間があります。この小部屋を中耳といいます。

中耳は耳管という細いくだで鼻の奥とつながっています。この耳管の機能が中耳炎になりやすいかどうかと大きく関係しているのです。

皆さんは飛行機に乗って離陸中やかぜをひいて鼻の調子が悪い時に、耳のつまった感じを経験したことがあるかと思います。これは、鼓膜の外の空気の圧(外気圧)と中耳内の圧との間に差ができて鼓膜のふるえが悪くなるためにおきるのです。

こんな時、ごくんとつばきを嚥下すると耳のつまった感じがとれることがありますが、嚥下した時に耳管を通して空気が中耳に入り、鼓膜の内外で気圧が同じになり鼓膜のふるえがよくなったからです

このように耳管は耳のきこえに重要な働きをしていますが、子供はこの耳管が大人と比べて十分に発達していないのです。

耳管の働きが悪いと中耳に水がたまってきます。これを浸出性中耳炎といいます。

浸出性中耳炎では痛みは感じませんが、水があるために鼓膜のふるえが悪くなるので難聴となります。

自ら難聴を訴える子供もいますが、多くはお母さんが、例えば、「名前を呼んでも返事をしない。」「最近、テレビの音が大きい。」「聞き返しが多い。」などの異変を心配して、耳鼻科を訪れることが多いようです。中には全く気がつかずに、学校検診や鼻みずがでるなど他の理由で耳鼻科を受診して偶然に発見されることもあります。

子供の耳管は大人より短く水平に近いために、鼻の奥についた細菌は容易に中耳に入り、そこで増殖します。これを急性中耳炎といいます。特に、子供に多い水の溜まった中耳は細菌にとっては絶好の繁殖地となります。

中耳に入った細菌によってうみがどんどん増えてきて、鼓膜は外側へと圧迫されて腫れます。鼓膜が腫れると、患者さんは耳に痛みを感じます。難聴や発熱をともなうこともあります。訴えることのできない乳幼児は、不機嫌が続いたり泣き止まないということもあります。

さらにうみが溜まると、鼓膜は腫れの圧力に耐えられなくなって小さい穴が開いて、耳だれとなって外に出てきます。

耳だれがでたからといって心配する必要はありません。耳だれがでると鼓膜の腫れがとれ患者さんは痛みが消えて楽になるのです。
我々、耳鼻科医は鼓膜を切開してうみをだすこともあります。穴は小さいので、すぐにふさがります。

耳管の発育が十分ではないこと、耳管が大人に比べて細菌が入りやすいことが子供に中耳炎の多い理由です。

幼児の場合、鼻の奥にあるアデノイドという扁桃組織が大きく、このことも耳管に影響を及ぼします。アデノイドは小学校に入る頃から急速に小さくなります。

耳管の機能は10歳頃で大人の機能に近づくといわれています。その頃から中耳炎になる頻度は大人の頻度と同じになってゆきます。

中耳炎に予防法などはありませんが、難聴を疑った時、鼻汁が多い時や風邪をひいた時には耳に水が溜まってないかを診てもらってください。