写真右奥二峰の山がトムラウシ           出発の朝、東大雪よりあがる朝日

= 十勝〜トムラウシ山・大雪山 =

病気をして、しばらく山へ行くのを自粛していたが、主治医が「無理をしなければ、普通の生活でいい。」と言ったので、さっそく山に行った。以前に十勝岳の頂上から見て、いつか歩いてみたいと思っていた十勝連峰から大雪山への縦走路を歩いた。「無理をしなければ良い。」と言われたにしては、残雪の6月にこのコ−スを歩くのは,病みあがりにしては、きつい計画だ。

同期の友人と二人、白金温泉から美瑛岳とオプタテシケ山との鞍部に向かう。

鞍部は夏遅くまで残雪が残っており、高山植物が咲き乱れ、キャンプをするなら絶好の場所である。我々が行った6月はほとんど残雪。鞍部で一泊。

翌日、オプタテシケ山に登った。頂上からは、うしろに十勝連山、前に大雪山・トムラウシ山、横に遠く東大雪の山々が見え、美しい。特に、東大雪の主峰ニペソツ岳が美しい。

オプタテシケ山から一気に500m斜面を下る。頂上では天気が良かったが、この頃から天気が急変、雪まじりの雨がふってきた。

下りたところでテントを張る。

テントの中で旭川の放送局のラジオを聞いていると、「今日は良い天気ですね。暑いですね。まるで夏のようですね。こんな日はビ−ルがうまい。」

旭川の近くの山の上で、我々は寒さに震えて動けずにいる。

テントの中でウトウトしていると、外が静かな気がした。鳥の鳴き声も聞こえる。

外に顔を出してみると、なんと晴天である。

すぐにテントをたたんで、出発した。

ここからトムラウシ山までは、こぶのような山を何個か越えていく。

暗くなってきたので、名もない山の頂上にテントを張る。

翌日、朝は朝焼けの山々が大変美しい良い天気だったのに、トムラウシが近づくにつれ、雪がふりだし、やがて吹雪になり、周囲が全く見えなくなった。

地図とコンパスと地面の傾斜を測って、どうにかトムラウシ山の頂上に立った。

当然ながら、何も見えない。

下山開始。トムラウシ山の大雪山側、登山道の傍に10mぐらいの池がある。

まず、そこをめざした。やがて、満々と雪解け水をたたえた、青い池が出てきた。

この辺りは岩が積み重なったような地形で、夏になるとナキウサギの鳴き声でうるさいところだ。

その池の傍で一人の登山者の足跡を見つけた。ここからしばらく大雪山は高原のような台地が続く。この足跡をたどることにした。

ちょっと離れると、相棒が見えなくなる。南極のブリザ−ドの中を歩くとは、こんな感じか? 一面、白の世界だ。

数時間歩くと、化雲岳が見えてきた。(化雲岳といっても、山があるわけではない。登山道の傍に巨大な岩がある。それを化雲岳と言う。化雲岳で登山道は二つに分かれる。天人峡温泉の下山ルートとさらに大雪山を行くルートである。

足跡は天人峡温泉に続いている。当初の予定では、朝日岳まで行く予定だったが、大雪山の広い高原をこの吹雪の中を歩いていく自信がなく、安全のために、足跡をたどって山を下りることにした。

天人峡温泉について、さすがに疲れたので、温泉に泊まることにした。

風呂に入って、ビ−ルを呑んで、二人ともろくに会話もせずに、朝までバタン キュ〜。

 

(追加)5年生(医学部は6年)の時、国立札幌病院の放射線科に実習にいった。その時、放射線科の部長先生が「山は好きなのだが、日帰り登山しかしたことがない。テントを持って、何日も山に行ったことがないので、夏休みに大雪山に連れて行って欲しい。」

そのようなわけで、7月に同級生5人(うち二人は山のクラブ)と医者二人で、同じコ−スを歩いてきた。十勝岳と美瑛岳の鞍部に同じようにテントを張った。

7月の末であったが、残雪が残っており、雪解け水が流れる細い沢を使って、水には困らなかった。

丁度、高山植物が咲き乱れていた。

オプタテシケ山の手前の道の傍で、「これがコマクサだよ。」と言って、道端に咲く小さな花を指差した。「これが高山植物の女王と言われるコマクサか!」

それまでは、まるで“百名山コレクターのように頂上に立つことが目的だったが、山には、花を見ながらゆっくりと歩く、という楽しみ方もあるんだ、ということを教えてもらった。

二日目はトムラウシ山の麓の台地にテントを張った。三日目に天人峡温泉に下り、札幌に帰った。
コマクサ